令和5年度 東京研修(8/2~8/4)【2日目】

 8月2日~4日に,東京大学や国立科学博物館で最先端の自然科学研究に触れる「SSH東京研修」を4年ぶりに現地で実施され、 1年生20名が 参加しました。


<2日目>

 2日目は東京大学駒場キャンパスを訪問し,大学院総合文化研究科の前田京剛先生による研究説明・施設紹介をしていただきました。超伝導現象や液体ヘリウムの超流動などの実験を実際に見せていただきながら,第一線の科学研究に携わっておられる研究者や学生の方々と質疑応答ができ,とても有意義な活動となりました。

【生徒の感想より】

  • 超伝導の歴史から分かりやすく教えていただき,おおまかな理解をすることができた。電子が超伝導にどのように関係しているのか,断熱膨張の仕組みなど超伝導に関わる考え方も実験を通して学ぶことができた。
    より高温で超伝導をするための材料を発見するためには経験や戦略も大切だが,やはり試行回数が非常に大切だと分かった。これは日常でも言えることで,あれこれ考えるよりも,とにかく挑戦してトライ&エラーが重要なのではないかと考えた。
    また,武多先生と同じく異分野交流が大切だとも話されていた。他の分野を学んで初めてその分野が理解できることもあると思うので,全ての分野に真摯に取り組みたい。
  • 液体ヘリウムを用いた実験が最も印象に残りました。昔は液体ヘリウムでないと超伝導を起こすことは出来ないとされていたけれども,今では液体窒素でも超伝導を起こすことができることが分かっていたり,低温で起こるとされた超伝導現象には高温超伝導物質でも同じような現象が見られたりすることなど,超伝導の歴史についても学ぶことができました。
    前田先生が強くおっしゃっていた,異分野交流もこれから大切にしていこうと思いました。

 そして,午後からは駒場キャンパスⅡに移動し,駒場オープンラボで株式会社PhotoQ3の浜窪隆雄先生の研究室を訪問させていただきました。浜窪先生は細胞レベルでの構造解析や分子相互作用変化を解析することにより,がんや重症感染症などの新しい創薬を研究されています。浜窪先生から研究概要について教えていただいた後,実際に研究室を見学させていただき,研究員の方との交流も行いました。

【生徒の感想より】

  • 起業された方にお話を聞く機会が貴重だったのでとても刺激をいただくことができた。特許を取得する方法や,ベンチャー企業を成長させるためのポイントなどを学ぶことができて楽しかった。先生のお話を聞いて,何をやるにも年齢は関係ないんだなと思った。
    また,開発されている研究室を見せていただいたことで,研究職や開発職の大変さを学ぶことができた。
  • がん治療と起業(photoQ3)が絡み合っていて起業や医療に興味がある自分にとても面白い研修だった。ベンチャーとは発明したものを製品化する企業つまりやりたいことを形にするものであることがわかった。
    またアメリカは先発主義で日本は先願主義であるという社会的背景も分かった。死の谷とダーウィンの海という研究,開発,製品化,産業化の一連の流れを表したグラフの他企業との競争などの困難が想像以上に多くあるというところに関心と大変さを浜窪先生の企業を通して肌で実感することができ,最も印象に残った。

 2日目最後の訪問は,再び本郷キャンパスに移動して工学系研究科の香取秀俊先生の研究室を訪問させていただきました。香取先生はセシウム 原子時計を100倍以上凌駕する18桁の精度「光格子時計」の研究をされています。さらにそれを利用した応用技術の開発をされています。

 さらに香取研究室に所属している本校卒業生の竹内亮人さん(D1)も参加してくれて大学院での研究の様子や高校時代の話などを教えてくれました。

【生徒の感想より】

  • ずっと時間という概念に興味があったのでお話を聞かせていただくのがものすごく楽しかったし興味深かったし勉強になった。時間の概念が変わって1秒の基準も変わると思うとすごくわくわくする。
    実験内容が難しくて理解しきれなかったけれど,最先端の研究に触れられたことはとても刺激になった。
  • 実験のお話はもちろん,今まで見えなかった時間差が見えた時にどう価値を見出すかという言葉すごく心に残っている。16桁から18桁の精度になったとて日常生活に多大な影響は一見ないように思えるが,その2桁によって秒の定義が覆り,ほかの定義も覆り,一般相対性理論や特殊相対性理論が実証されていき,と科学的に大きな変化をおこす,そのために研究を進めるという視点と姿勢が本当にかっこよくて,研究そのものにはもちろん,東京大学で研究したいという気持ちが大きくなった。