2月20日(木)に、鳥取県八頭町地域おこし協力隊 小宮春平先生をお招きし、理数科1・2年次生を対象に「これからの生物多様性について」というタイトルで講演していただきました。小宮先生は出身地の福岡での生物多様性保全活動だけでなく、津山高校とも距離的に近い鳥取県八頭町でも活動されておられるので、中国山地の自然環境と保全活動について現場での実感を交えて教えてくださいました。さらには生物保全団体「わかぜん」との連携、YouTubeチャンネル「コミヤの生物多様性に関する一考察」での発信やSNSの活用などを通じ、日本全国での生物多様性保全活動のネットワーク形成にも関わっておられ、その経験についても教えていただきました。
講演会の様子
講演内容は生物多様性の教科書的な基礎知識から、日本の政策として生物多様性がどのように扱われているか、農村インフラと生物多様性の両立のための連帯をいかに実現するか、自然共生サイトの登録からの付加価値付けの活動、方法論としての「隠す保全」と「見せる保全」、生物多様性保全活動の現場から見た外来種の問題など、非常に多岐にわたりました。実例をあげて順序立ててわかりやすく具体的に説明されていたので、生徒の生物多様性への理解度は大きく向上したようです。質疑応答も大変盛り上がり、講演後にも質問を続ける生徒も出て大変有意義な時間となりました。
研修後のアンケートでは、特に「実際に現場で活動している人から話を聞いて、粘り強さ・協調性の大事さを感じたか」の項目の肯定的解答がもっとも多かったです。粘り強さ・協調性は津山高校のSSHで育みたい三要素(VGR)の1つGritに当たります。自らの希望する進路を切り開くために、どのような資質が必要になるのかについても、生徒は考えを深めることができたようです。このような取り組みを通じて、津山高校生は成長していきます。
<生徒の感想>
・生物が好きというところを突き詰めて、自分の興味と社会的貢献を両立する形にしているのがすごいと思い、またそのようなことは大切だと思いました。また、日々の生活と環境がどのように関わるかを考えてみたいと思いました。
・自然のことを考え、実際に触れ合うことはとても楽しそうだと思った。小宮さんからは すごくやりがいや生き生きとした雰囲気が感じられてエネルギッシュなことをされているんだなと感じました。
・今回の講演を聞いて、活動をYouTubeで広めることができ、また援助もしてもらうことができるということを知り、SNSをうまく活用していくことはとても大切なスキルの1つということを改めて実感した。また、生態系の情報を公開することで世間からの注目は増えるが、それと同時に密猟されてしまうというデメリットがあるというのが複雑で解決の難しい問題だと思った。
・授業で習った生態系の保全について更に詳しく知ることができ、実際に生態系の保全のために活動している人の話が聞けたことで、より知識を深める事ができた。生態系の保全の活動をSNSなどに公開するメリット・デメリットについて考えたことがなかったが、今回の話を聞いて実際にしたほうが良い場合としない方が良い場合があることを知った。生態系の保全に関わらず、自分が良いと思ってしたことが実は良くない影響を与えていることもあると思うので、気を付けていきたいと思った。
・SNSを活用した今風の保全活動で、保全の周知の大切さを知ることができた。ただ黙々と自分がしたい保全活動を行うだけでなく、周辺分野との兼ね合いも考慮することが現実的には必要なのかとわかった。外来の生物がもたらす影響には驚かされた。生物多様性を守り豊かな自然環境を保全するためには仲間を増やしたり、循環して持続できるような仕組みを作っていったりすることが大事だとわかった。私は生物関連の進路に進みたいと思っているので、今日の講演会はとても参考になった。普段食べている食事や見ている景観の裏に、こういった人の努力があることを忘れないようにしたい。
・興味を惹かれる内容で、聞いていて楽しかったです。私は今まで、外来種によって引き起こされる問題がほとんどだと考えていましたが、鹿など在来種も害を与えることがある。さらに、外来種の中でも無害なものも存在すると知り、一概に外来種を悪としてはいけないんだと感じました。生物多様性を守るため、全国で協力し合う体制ができているのもすごいと思います。この津山高校にも池とビオトープがあるので、何か取り組みをできたら嬉しいです!貴重なご講演ありがとうございました。
・現実的に自分たちでできることを考えて実行している点が、非常に印象に残りました。理論や理想も大事だけど、みんなが納得でき、得をするような活動であればその活動を継続していけるというのは、現代社会の様々な課題解決において重要な考え方だと思いました。
・この度は非常に興味深いお話をしていただき、ありがとうございました。水辺の環境悪化についての動画を何度か拝見させていただいた事があり、それに加えて今回の講演で環境保全に更に関心が増しました。自分の目指す職種は環境保全とは直接かかわりはないのですが、多様性と我々の生活のために何らかの形で環境保全に目を向ける機会を持ち、少しでもお手伝いできる機会が設けられたらいいなと実感しました。
・大人が全力で楽しそうなことをしていることは、大きな希望です。会えて良かったです。ありがとうございました。私の家の近くに、アメリカザリガニが住んでいる溝があります。子供の頃はザリガニを釣ったりして遊んでいましたが、今日までそのことを忘れて いました。今日の放課後は溝を見て帰ります。できたら寄生虫に気をつけて食べてみたいです。
・生物多様性の保全や環境保全は絶滅危惧種のためとか環境のためとかではなく、自分たちのためになることがわかりました。小宮先生の活動を実際に聞いて、保全活動にとても興味が湧いたし、生物のために自分たちのためにするというよりかは、ただ楽しいからするとか美味しい魚が食べたいからするとかで、自分もそんな風に生きられるようになりたいと思いました。
・生態系については座学での知識しかなく、また私個人としてもあまり興味はありませんでしたが、今回の講演を聞き、興味が湧きました。現実的解決の難しい問題ではありますが、何かをしないとそもそも何も変わらないと思い知らされました。楽しく活動されながら、現実的にもサイクルを回していこうとする所が凄いなと思いました。実際の現場では理論よりも行動の方がより重視されるのかなと感じました。理学部志望なのですが、生態系に関する興味関心が深まったので、より一層勉学に勤しみ、課題解決に向けて努力しようと思いました。本日はご講演いただきありがとうございました。
・本日の講演会は、生物多様性を教科書とは違った視点から、学ぶことができるとても面白いものだった。教科書の場合、生物多様性を保全する目的というのは、世界規模、地球規模のとても大きなもののように感じる。しかし、それだと自分の実生活との結びつきがわかりにくいし、具体的に何をすればいいのかわからない。今日の講演では、生物多様性を守るというのは、例えば、美味しい食材を食べることができたり、きれいな景観を守ることができたりなどそういう身近な私達の利益に直結しているということを知ることができた。自分の『好き』を活動の中に取り入れることで、持続的な活動の維持を可能にする環境保全のスタイルもオモシロイと思った。今回の講演の内容を頭に入れて、今後の生物多様性に関する学びを深めていきたい。
・小宮先生から様々な環境保全の取組を聞いて、視野を広げることができたと思う。私が特に印象に残ったのは、ザリガニの大量捕獲の写真だった。アメリカザリガニの繁殖力の恐ろしさを改めて感じた。水生生物について語られる小宮先生はとてもキラキラしていて、思わず話に聞き入ってしまった。また小宮先生の行動力にも感銘を受けた。今日の講演会で生物多様性を身近に感じる事ができ、自分の行動次第で世の中をよくできることがわかったため、私も自分にできることを探して行動していきたい。
・前日にYouTubeを拝見してから講演会に臨んだのですが、そのYouTubeに載せるにも、そのメリット、デメリットを池ごとに考えてから載せていることをお聞きして、希少な生物を保護することの大変さをとても感じました。 また、在来種を保護すべきで、外来種を駆逐すべきではなく、ヒトに害を与えているもの、したいことを阻害するものを駆除すべき、ということは当たり前に感じるけど、今までの勝手な偏見や思い込みとは違っていて、とても印象に残っています。 生物多様性を守ることはヒトのためだと聞いて、これまでヒトが開発したり、汚染したりしてきた自然を元の姿を戻すまでは厳しいけど、出来る限りそれに近いところまで戻すことはヒトの義務のように思いました。 私は、分野はまだ少し悩んでいますが、将来研究がしたいと考えており、地球環境問題に携わるような研究を行いたいと思っています。今回の講演会を通して、生物多様性の保全の大切さだけではなく、実際現場に行くこと、現地の農家さん、住民の方、興味のある方などと連携することの大切さを知ることができました。