7/30(水)に理数科2年次生を対象とした先端科学研修として、兵庫県播磨科学公園都市にある、世界最先端の研究施設であるニュースバル・SPring-8・SACLAの3施設を見学しました。 この3つの施設は、「放射光」という光を使って物質を分子・原子レベルで分析することのできる巨大な施設で、特にSPring-8、SACLAは世界トップクラスの性能を誇ります。
① ニュースバル(兵庫県立大学高度産業科学技術研究所)
ニュースバルはSPring-8の施設内に設置されており、極端紫外光から軟X線領域の放射光を用いてさまざまなナノテクノロジー開発を行っている施設です。研究員の方から施設や研究内容の説明を受けた後、蓄積リングのあるビームライン内を見学させていただきました。研修当日、蓄積リング内には0.95GeVまで加速された電子が周回しており、まさにビームタイム中の見学でした。研究員の方には、施設のことや研究内容のことなどについて生徒からの質問に答えていただきました。現在2年次生は課題研究に取り組んでいる最中であり、研究員の方のお話はきっと大いに参考になったことでしょう。
② SPring-8&SACLA
午後からは、 SPring-8(Super Photon Ring 8GeV) とSACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser)の概要について説明を受けた後、これらの施設を見学させていただきました。
SPring-8は円形加速器で電子を加速させて硬X線の超高輝度放射光を発生させることができる、大型実験施設です。太陽の100億倍明るいといわれるこの放射光を利用して、物理・化学・生物・地学・考古学など幅広い分野の研究が行われています。SACLAは世界でも数少ないX線自由電子レーザーを発生することができる施設です。アンジュレータによって電子を蛇行させることで、指向性の高い放射光を発生させています。その明るさはSPring-8の10億倍であり、物質の極めて速い動きや変化の仕組みを原子レベルで解明することができます。これらは共に世界最先端の施設であるため、外国から実験に来られる研究者も多くいるようです。
見学の後は実際にこちらで研究を行っている理化学研究所の山口豪太先生から、施設や研究についての説明をしていただきました。生徒たちは講演を通して、放射光についての理解を深めると共に、研究をするうえでの心構えや壁にぶつかったときの乗り越え方など、サイエンスにおいて大切なことを学んだ様子でした。この学びを今後の課題研究、さらには大学での研究に生かしてもらいたいと思います。さらに、このような世界最先端の施設が日本にあることを、生徒・教員一同、大変誇らしく感じました。
〈生徒の感想(抜粋)〉
・ニュースバルでもほとんどの元素を特定できることに驚いた。赤外線や紫外線、X線という光線があることは知っていて、nmスケールで世界の様々な物体などを見ることで何が分かるんだと研修前は思っていたが、nmスケールで物体を見ることでその物体の構造や元素などを解析できると研修を通して知り、いかにこの研究がこれからの社会に役立つのかを知った。しかし、SPring-8やSACLAを見学すると、やはりニュースバルとは桁違いの大きさだということがわかった。それ以上にこれらの施設が10年前から存在していることを知り、驚いた。これらの装置を作るところから実際に起動させ、実験し、論文を書くまでにとてつもなく多くの人が関わっているのかと思うと、人間一人でできることってかなり限られていて、何をするにも協力が必要不可欠なことを改めて思い知った。研究が1つのゴールまでたどり着いていなくても、わかっていることとこれからの展望にすることをはっきりしておくことが論文を発表する上で大切なことを知った。S探Ⅱに活かせればいいなと思った。
・ニュースバルでは1つの実験や研究に何人もの人が役割と責任を持っていることを感じられた、また案内をしてくださった方が楽しそうに話しているのを見て働く場所を決める時に自分がしたいと思える仕事を選びたいと思った。SPring-8とSACLAの見学では日本1の放射光研究施設を見ることができていい体験ができた、またSACLAやSPring-8にしかない技術を使うために海外から研究するために来るほどすごい施設が日本にあるからこれから医療現場や日常生活でも使われるような技術ができることが楽しみだと思った。
・今日一日研修を受けてみて、X線、放射光は思っていたよりも様々なことで活用されていることがわかった。SPring-8、ニュースバルを見てみて、思ったよりも工場っぽくて驚いたのと、パイプなどが多くて何がなんだかわからないことが多かったが、先生方の説明を聴くことでそれぞれが重要な役割を果たしていることが理解できた。また、自分の好きを突き進めている人の熱量の大きさを感じることができ、私も自分の好きな事を突き進みその中にある苦難も乗り越えれるような人間になりたいと感じた。
・ニュースバルでは、兵庫県立大学がどのような研究を行っているかをご説明いただき、実際の大学ではどのような研究をどのような器具を用いて行なっているかを知ることができ、大学に対するイメージが深まった。更に、放射線の最先端の技術を見せていただき、津山の近くにこのような素晴らしいものがあることに驚いた。その後、実際に研究員の方からお話を伺い、実際研究者はどのようなことをしているかなどを知ることができた。更に課題研究に活かせそうなお話も聞くことができ、とても満足した研修だった。
・最初X線といえばレントゲンに使われているという印象が強く、それ以外何に使われているかよくわからなかったが、X線で物質がどんな材料で出来ているのか、物体の内部、物体の小さな構造、つくりが詳しく見れることを知り、X線についての知見を深めることができた。また、SACLAの電子を制御し移動させる磁石が14tもあることや磁石の配列が上はSMSM、下がMSMSになっていることで磁力の反発を利用し、波長の短い、より強いx線を生み出していることを知った。また最後の公演では、研究者ではなくとも常に諦めずにチャレンジしていく姿勢と、行き詰まっても少しずつ改善していく姿勢をリスペクトし、自身でもその姿勢を持とうと思えた。