「ナチュラルサイエンスⅠ・Ⅱ」第2回ワークショップ

 ナチュラルサイエンスⅠ・Ⅱ(高校2,3年次生対象)の第2回ワークショップを2020年6月27日(土)に行いました。

 今回のワークショップには、岡山大学大学院環境生命科学研究科 永禮英明先生をお迎えしました。永禮先生は本校のSSH運営指導委員でもあります。今回は「トレードオフ問題」を中心とした講義でした。身近にある水道・下水道を例として、感染症を防ぐために行う塩素消毒にはリスクが存在することを教えていただきました。学校設定科目ナチュラルサイエンスで身につけるべきVisionとして、多面的・多角的な視点や、学問的な広い視野を得る機会となりました。

○事前学習

事前学習ではトレードオフ問題についていくつか取り上げ、社会の問題に興味を持ち、対立する要求を整理することでどのように解決するべきなのか意見を交換しました。

○生徒の感想(抜粋)

・塩素消毒の利点しか考えていなかったが、今日の講義で塩素消毒には現代の技術から、もう十分に安全だと考えられる水道も、塩素と水中の有機物と反応した副生成物などにより、発がん性などのリスクもあると分かった。しかし、塩素消毒に危険性があるとはいえ、発がんの確率を考えると塩素消毒をするべきであるといったことなどを思い切って取捨選択することの重要性を知った。また、リスクというものは完全になくすことはできないという現実も再認識した。ウイルスや感染症の流行性などを数式に表すことができることを知り、改めて数学の必要性を実感し感動した。将来自分は工学系の研究をしたいと思っているので今回学んだことを活用してリスク判断と吟味を十分に行うことを忘れないようにしたい。

・何気なく使用している上水道や下水道の歴史的背景を学ぶことができ、衛生問題によって水道が整備されたことを知れたことは非常に興味深かったです。塩素消毒の問題については、その問題に対して客観性のある判断基準を設けていることを知り、やはりトレードオフ問題に対しては、客観的な妥協ラインを設ける必要があることに気づかされました。断片的な情報のみによって批判的な意見を持つ人々のようにならないためにも、多面的な見方を持ち続けることを意識していきたいと思います。

・上水道や下水道について単純な見方しかしていませんでしたが、どちらも感染症を防ぐという目的があることを知ることができました。事前学習でトレードオフについて考えていたので、水系感染症と塩素消毒のことについて講義がよく理解できました。塩素消毒による発がん性の確率が非常に低くても避けたくなるのも人間の性だとは思いました。また、企業が好きなように水道料金を変えることができたら、私たちは生きていくために水道料金に莫大なお金を支払わなければならないと思いました。このようなトレードオフ問題について、まずは今何ができるか考える良い機会となりました。

・今まで私の中での「大学での研究」や「科学技術」という言葉は、最先端の研究や日常とは程遠い研究のようなイメージがありましたが、このような生活基盤を確立させることができることが科学の本来の目的なのかなと改めて感じました。トレードオフという言葉は今回のワークショップの中で初めて知りましたが、考えてみれば、今までの実生活でも思い当たることは多くあり、全ての物事に良い面と悪い面があるということを踏まえれば、全ての物事にトレードオフが付きまとうのかなと思いました。