令和2年度 理数科 放射線セミナー(1年次生)

 8/4(火),理数科1年次生を対象に 岡山画像診断センター 副院長 清 哲朗 先生をお迎えして,放射線セミナーを開催しました。
 このセミナーでは,身の回りに存在しながら,また理学・工学・農学・医学など他方面の進学先で将来関わることになるにも関わらず,あまりその仕組みと中身を知られていない「放射線」について必要な知識を学び,実験を行います。

はじめに,清先生から放射線の種類と性質,発生源と発生のメカニズム,健康被害の仕組みと線量の関係について講義をしていただきました。その後,「霧箱」を作成して,放射線を観察します。

<清 哲朗 先生の講義>

<霧箱による放射線の観察>

 プラスチック容器,隙間テープ,黒いフェルト生地を用いて作製した霧箱内を,アルコール蒸気で満たし,ドライアイスで冷却します。これにより,気体アルコールの過冷却状態を作ります。

 過冷却状態のアルコール蒸気中を放射線が通過すると,その飛跡が飛行機雲のように見えます。実験では,キャンプ用ランタンに用いられる市販用マントルに含まれる微量物質からの放射線(α線)と,宇宙からやってくる放射線である宇宙線ミュー粒子の飛跡を観察しました。

 観察しやすいように部屋を暗くし,LEDライトを用いて飛跡を観察します。放射線が直接見えたわけではありませんが,未知の存在だったものが普通に飛んでいることを実感し,生徒も大興奮でした。

<自然放射線の測定>

 最後に,放射線測定器「はかるくん」(シンチレーションカウンター)を持って,班ごとに校内の各所で自然放射線の測定を行いました。

 放射線の特徴を教えていただいたので,その特徴から自然放射線が多い場所・少ない場所を予測し,実際に足を運んで調べます。予想通りの結果になって喜ぶ生徒や,予想通りの結果にならなかった場合は「なぜなんだろう」と話し合ったり,先生に質問したりと,充実した時間を過ごせたようです。

 本日の講演で,生徒は自然放射線のレベル,人体への影響と線量の関係など,放射線に関する正しい知識を得ることができました。また,放射線の有効活用の例として,医療では欠かせない技術となっていること,また工学や歴史学にも役立っていることも教えていただき,より詳しく勉強したいという意識が向上できたようです。最後に生徒代表がお礼の言葉を述べた後,清先生から「職業を選ぶ上で,流行りのものを追いかけるのはよくない。今は無関心の分野が,将来脚光を浴びるかもしれないから。いちばん良いのは,自分が興味・関心のある分野を選ぶこと。今のうちから,しっかりと考えてみてください。」というお言葉をいただきました。理数科の生徒がより成長できる指標を教授いただき,大変ありがたく思いました。

<生徒の感想>

・放射線と聞くと怖いイメージを抱く人が多いが,常に微量だが被ばくし,その量で健康に害はないということは知る必要があると思った。また次世代に影響を与える(被ばくによる)と考えている人が年々減っては来ているが,まだいることに少し驚いた。もっと放射線に関しての正しい知識を発信すべきだと思った。

・放射線について,中学校でも危険なものとそうでないものがあるということを学んで放射線のことを知った気になっていましたが,なぜ危険あるいは危険ではないかという理由を詳しく知ることができました。このセミナーをきっかけに,放射線の人体や自然への影響,線量の単位について調べていこうと思います。

・地球上でも放射線量に差がかなりあることに驚いた。また,医療の面で利用する際に,なぜ利用できるのかということを少しだけだが知ることができ,利用の可能性を感じた。今までの放射線に対するマイナスのイメージが変わり,視野を広げることでできて面白かった。

・本日の講義で,放射線についての知識がさらに深まり,放射線に対する考え方も変わりました。実習がとてもおもしろく,初めて生でα線の飛跡を見たときは感動しました。「はかるくん」でいろんな場所の自然放射線を測定してみて,特定の場所で測ると数値が大きくなることがとても興味深かったです。