令和3年度「理数科講演会」

 3月15日(火)に,京都大学防災研究所 小坂田ゆかり 助教 をお招きし,理数科1・2年次生を対象に「10年後,50年後,温暖化で日本の豪雨はどう変わる?」というタイトルで講演していただきました。

 小坂田先生の研究室では、集中豪雨やゲリラ豪雨など豪雨災害に対して、降雨量を測る・予測する。ビデオカメラを気球につり下げて雨雲の中に打ち上げて、そこで見える実際の降水粒子と最新型レーダーでの見え方を比較するという大規模な観測実験を実施し、雨滴粒径分布や降水粒子種類の推定手法の開発。さらにその応用として、降水量を精度良く推定したり、大気上空で発生するゲリラ豪雨の“卵”を探知したり、地形性降雨(地形性の上昇流によって降雨が強化される)を予測したり、レーダーデータを気象予報モデルへ取り入れる(データ同化)ことで降水量予測をしています。
 また,世界の雨量計による観測情報や人工衛星による地球規模の降雨観測情報を用いて、現気候条件での異常降雨の出現特性の把握や気候変動による兆候を探っています。さらに全球気候モデル(GCM)や領域気候モデル(RCM)とタイアップさせて30年後、100年後の異常降雨の出現特性を明らかにして人間社会への影響予測を進めています。(京都大学 中北研究室HPより引用)

講演会の様子

 講演内容は,気象に関する基礎知識や、積乱雲のできかた、豪雨の種類、線状降水帯などに関する専門的な内容に加え、地球温暖化による今後の日本での豪雨への影響をシミュレーションした研究結果を踏まえた防災の重要性を、豊富なデータと非常に分かりやすいプレゼンテーションで丁寧に楽しく説明していただきました。

 生徒は,研究の大変さはもちろんですが,それを上回る新しいことを知ることの楽しさ・面白さを感じとったようです。気象や防災研究および研究者への関心を大いに高めただけでなく,将来の進路への指針(Vision)ともなったのではないかと思います。

 小坂田先生は本校の卒業生(2012卒業,63期)であり,講演会場であった 100周年記念館やテニスコート(高校時代はソフトテニス部でご活躍されていました)を懐かしんでおられました。

 放課後にも,小坂田先生との交流会を開催しました。理数科生徒だけではなく普通科生徒も集まり,先生の気さくな人柄とも相まって,研究の魅力について,詳しく語り合うことができました。

 まだ知らないことや新しい知識について,どんどん質問していく姿勢(Research Mind)は,津山高校のSSHで育みたい三要素(VGR)の1つです。このような取り組みを通じて,津山高校生は成長していきます。

<生徒の感想>

・次の課題研究に向けた研究への意識の仕方や向き合い方が変わった。地道な作業や実験の失敗が時には新たな発見があるということが一番印象に残っている。

・なりたいものやしたいことがなくて、困ってる時小さい頃自分が興味を持っていたことから探すということは自分もしてみたいと思った。研究は地道な作業の積み重ねだということを小坂田先生の講演を通じてとても痛感した。

・自分自身の興味のあることを研究し、その答えを探そうとしている姿をかっこよく感じました。私も勉学に励み、良い研究につとめたいと思いました。

・資料の分析などをAIに任せることで資料の分別などはしやすくなるが人間が自分の手ですることでその情報から得られる目的以外の情報を得ることができるということを学びすごく納得することができた。

・何万枚もの天気図を見ているうちに新たな能力が身についたという話を聞いて、これから課題研究をしていくときに自分もそのような気づきが生まれるように頑張りたいと思いました。

・高校生の時にあまり目標がないのはいけないことなのかと少し自分が不安になっていた部分があるので今回の講演を聞いて安心しました。これから自分の将来について考えていきたいと思います。

・温暖化による影響を予測するシナリオはレベル毎にあることを知って、課題研究の仮説や計画も様々な予測をして立てる必要があると思った。また、研究者としての仕事は地道な作業が大部分を占めるということを聞き、自分も課題研究をするときには少しずつ成果を積み上げていきたいと思った。

・災害はいま増えているが、知識としてはあまりなかったので、とても参考になった。地球温暖化について言葉だけでなく、身振りや言葉遣いにも気を使ってくださって、とてもわかりやすかった。大学でも研究風景や、大変だったことなど、とても詳しく、そしてわかりやすくお話してくださったので、将来について少しイメージを持ちやすくなった。また、自分の興味があることに焦点を当ててみて、しっかり大学やその先のことも考えておきたいと思った。

・小坂田先生が今のお仕事に就くまでの経緯やそこでの研究内容、現代の日本の気候・気象のことについて私達にも理解しやすい言葉にして丁寧に説明してくださって、話して下さったこと一つ一つがきちんと理解できて、興味が湧きました。これから始まる課題研究で、最後に二年生の先輩が仰っていたような共感を自分も味わえるように頑張ろう、と思いました。温暖化という言葉は知っていても自分にとって身近だったので詳しくは知らなかったため、今日わかりやすく説明していただいて環境について興味が湧いた。未来のことがわかることはすごいことだと思った。

・今回の講演を聞いて地球温暖化と気象の関係はとても深い関係であると知りました。地球温暖化はただ、気温が上がるだけではなく、豪雨の回数が上がるなどの影響を及ぼすとは知りませんでした。また、台風は地球温暖化の影響で回数だけは減少するとは驚きでした。このような講演をしていただきありがとうございました。

・私は今まで気象や気候に関する講義や講演会を受けたことがなかったので、とても興味深かった。地球温暖化に伴う異常気象の発生については、テレビやインターネットで何となく聞いた事のある程度だったので、今回の講演会を通して正しい理解をすることが出来たと思う。また、人間が行うからこそ分かることがあるといった内容にとても感銘を受けた。

・小坂田先生が誰でもわかるように簡単に説明してくださったので、多くのことが理解でき、講演を通して多くのことを知ることができて良かった。自分が考えている進路に研究者はなかったので、視野を広げることが出来た点でもとても貴重な体験だった。この講演を通して学んだことをそのままにするのではなく、将来自分が1番したいことができるように活かしたいなと思った。

・自分は医学に興味があり、気象についてはあまり興味はなかったのだが、今回の講演を聞いて気象って面白いなぁと思った。こういう風に自分の視野の外側に沢山おもしろい世界が広がっているんだろうなあと思った。今後自分が何を専攻するにせよ、自分の外側にも意識を配れるような幅の広い人間になりたい。

・先生がご自身の研究に対して熱心に楽しく研究されているというお話を聞いて研究職の楽しさがわかりました。

・自分は将来研究職についてこれから先の人生を歩んでいく自信が無かったけど、講演を聞いて少し興味が湧きました。これから自分の興味のあることについてもっと調べたりしたいなと思いました。

・質問にも答えてくださりありがとうございました。私は課題研究をして、やっぱり研究で、みんなと考察したり、データとったり、ちゃんと結果が出たりするのが楽しいと感じて、研究職に就きたいと思っています。印象に残ったのは座談会での、「責任がある方がいい、安心するとダメになると思う」という言葉です。安定した職業に就きたいと思いがちでしたが、小坂田さんは責任感があってすごいと思いました。見習いたいです。自分の本当にやりたいことを探したいと思います。