令和元年度 理数科 放射線セミナー(1年次生)

 7/24(水),理数科1年次生を対象に 広島国際大学 保健医療学部 診療放射線学科 林 慎一郎 准教授をお迎えして,放射線セミナーを開催しました。
 このセミナーでは,身の回りに存在しながら,また理学・工学・農学・医学など他方面の進学先で将来関わることになるにも関わらず,あまりその仕組みと中身を知られていない放射線について必要な知識を学び,実験を行います。

<林 慎一郎 先生の講義>

 はじめに,林先生から放射線の種類と性質,発生源と発生のメカニズム,健康被害の仕組みと線量の関係について講義をしていただきました。その後,「霧箱」を作成して,放射線を観察しました。

<霧箱による放射線の観察>

 プラスチック容器,隙間テープ,黒いフェルト生地を用いて作製した霧箱内を,アルコール蒸気で満たし,ドライアイスで冷却します。これにより,気体アルコールの過冷却状態を作ります。
 過冷却状態のアルコール蒸気中を放射線が通過すると,その飛跡が飛行機雲のように見えます。実験では,キャンプ用ランタンに用いられる市販用マントルに含まれる微量物質からの放射線(α線)と,宇宙からやってくる放射線である宇宙線ミュー粒子の飛跡を観察しました。
 観察しやすいように部屋を暗くし,LEDライトを用いて飛跡を観察します。放射線が直接見えたわけではありませんが,まだ未知の存在だったものが飛んでいることが実感でき,生徒も大興奮でした。

<自然放射線の測定>

 最後に,放射線測定器「はかるくん」(シンチレーションカウンター)を持って,班ごとに校内の各所で自然放射線の測定を行いました。
 放射線の特徴を教えていただいたので,その特徴から自然放射線が多い場所・少ない場所を予測し,実際に足を運んで調べました。 自然放射線の測定が予想通りの結果になって喜ぶ生徒や,予想通りの結果にならなかった場合は「なぜなんだろう」と話し合ったり,先生に質問したりと,充実した時間を過ごせたようです。

 本日の講演で,生徒は自然放射線のレベル,人体への影響と線量の関係など,放射線に関する正しい知識を得ることができました。また,放射線の有効活用の例として,医療では欠かせない技術となっていること,また工学や歴史学にも役立っていることも教えていただき,より詳しく勉強したいという意識が向上できたようです。講演終了後も,質問する生徒がたくさんいたようで,講師の林先生からお褒めの言葉をいただくこともできました。

<生徒の感想>
・今まで放射線はただ怖いもので,絶対にない方がいいと思っていましたが,レントゲンなどの医療でも広く使われているなど,知識を深めることができました。霧箱による放射線の観察では,普段私たちの周りにある放射線の飛跡がはっきり見え,その数の多さに驚きました。外での放射線測定では,場所によって量が大きく異なるということに驚きました。今までは,私とは放射線はあまり関りがないと思っていましたが,今回のセミナーによって意外と身近で,使い方によってはとても便利なのだと知ることができました。
・放射線が高いエネルギーを持った粒子の流れであることや,五感で感じることができないという特徴を学んで,放射線に対する認知を深めることができてよかった。また,確率的事象や確率的影響などの言葉を聞いて,どのような現象なのか詳しく調べてみたいと思った。
・霧箱の実験では,班によって見え方が違ったり,電荷を持ったものを近づけるとより多くの飛跡が観察できて興味深かった。磁場をかけたらどうなるのか気になるので,科学部でやってみたい。校内での放射線測定では,場所によって大きな違いがあることに驚いたが,線量ではわずかな違いに過ぎないことがわかった。この経験を生かして,線量の単位や指標の知識を深め,日頃から正しい判断ができるようになりたいと思った。
・放射線を受けて被曝した,という話は何度も耳にしたことがあるけれど,被曝とは何なのか,また被曝した人はなぜ(全員ではないけど)亡くなってしまうのかと疑問に思っていた。その答えは,放射線によりDNAが破壊され,その量が多すぎると体の修復機能が追い付かず,遺伝情報に異常が起きてガン細胞に変異するということだった。なるほど。
・放射線について,授業で学んだときよりも深く学ぶことができ,とても楽しいと感じた。霧箱の実験では,α線の飛跡が目に見えたことが印象に残っている。また,宇宙からのα線の飛跡も観察でき,つながりを大きく感じることができた。東日本大震災で「放射線は怖いものだ」という偏見を持っていたが,放射線がなければ私たちは生きていけないことも学んだ。この正しい知識を,周りに広めていきたい。
・常に誰もが放射線を浴びているということを知って,最初「え?怖い!」と思っていた。しかし,放射線を浴びるということ自体は普通のことで,浴びすぎることがよくないだけであるということを理解した。今日のような話を知らないと,病院での検査を拒否して病気が見逃されたり,行動範囲が狭まってしまうなど,逆に人生に有害となってしまうと思った。今日の話を周りの人に伝えていくことで,できるだけ多くの人に放射線のことを知ってもらいたいと思った。
・放射線を利用した治療にも興味がわいた。放射線を利用したローコストな治療が開発される日が来るといいなと思った。今回のセミナーで学んだこととして一番大きかったのは,何も知らずに自分の印象だけでバリアをはってしまうことは,良くないということである。今後は何事も表面上で判断せず,自分で調べて知るということを大切にしていきたいと感じた。